2023.9.5
作家さんのインスタグラムを見てみる!
(写真:及川さんのサンドアート作品)
”トントントン”
夕日の差し込む台所から料理をする音が聞こえる。それはいつも明るくて、どんなに辛いことがあってもクヨクヨしない、大好きなおばあちゃんが生み出す心地よい音。
「祖母は強くて明るい人でした。両親が共働きだったので祖母と一緒に過ごした時間が長かったんです。祖母はいつもお饅頭や色々な物を手作りしていました。家族を喜ばせたい、そんな想いからだったのかな、と今なら分かります。」そう語るのは東京・葛飾区でハンドメイド教室を主宰する「アトリエシュシュ」の及川さんだ。彼女は”モノ”を売るのではなく”楽しい体験”を売るための教室を開いている。原体験は幼い時を共に過ごした祖母にあるのだと思う、と語りながら自身でも納得感を深めていく様子の彼女。
誰にでも今の仕事や趣味を選ぶ無意識のキッカケとなった人物が存在するのだろう。自分にとってのそれは誰か?懐かしいあの頃を思い起こしながら読み進めて頂けたら幸いだ。
(写真:体験の様子)
及川さんは元々、ハンドメイドが好きではなかったそうだ。しかし5年ほど前の母の日の贈り物にと、娘さんと一緒にハーバリウムの教室に何気なく行ってみた。「とても楽しかったんです!そして感動しました。本当は下手なんですが、とてもうまく出来たように感じて、天才かも!と思いました(笑)」
それからすぐにハーバリウムを学んだ。そしてこの経験から完成品を売るのではなく、最初から体験をメインに売る教室を開いた。いまはハーバーリウム以外にもお花やサンドアートも教えている。
「とにかく楽しくて、癒されて、ストレス解消になって、うれしくなる。そんな経験をしてほしいんです。実際にそのような声もいただいています。そして生徒さんだけでなく、私も同じ気持ちになれます。」
無意識のうちに、教室を通してかつての祖母と同じ役割を果たしていた。彼女はそう気づいたそうだ。
(写真:及川さんのハーバリウム作品)
先日、及川さんの元にこんな電話が来た。ホームページを見たある母親からの問い合わせだ。
ハンドメイドが好きな不登校の子どもがいる。好きなハンドメイドで少しでも社会と繋がってほしいのでぜひレッスンを受けさせたいが、子どもの気分や体調で直前に行くことができなくなるかもしれない。既に多くの教室に断られてしまった。及川さんは少しも迷わずに「OKですよ!来てください。」と返事をした。
それからその親子は毎月二人でレッスンに通って来ている。とても楽しそうな様子だという。
「先日、ご縁がありラジオに出演したんです。その時のテーマがSDGsでした。私はお花の教室でも捨てられるはずのお花を積極的に使ったり、ボランティアにも興味があります。」自分の出来る範囲から、出来るだけ世のためになる選択をしたい、と彼女は言う。及川さんの優しさと思いやりの深さは、きっとおばあちゃん譲りなのだろう。
(写真:体験の様子)
及川さんの教室に来た生徒たちは、その明るい彼女の人柄に「腹を抱えて笑いました!」と言って帰っていくそうだ。男性も通える珍しい教室でもある。
「かつての私のように、ハンドメイドに興味がない方、むしろ嫌いな方にもぜひやってみて欲しいです。」
彼女の活動が誰かの”原体験”になる日はそう遠くないと筆者は感じた。そして、明るく楽しく、想いを語ってくれた彼女にぜひ会いに行ってほしい。一人でもより多くの方に及川さんの魅力が届きますように、と念を込めてこの文章を書き終えたい。インタビュー中、私も笑わせていただいた。ありがとうございました!
(インタビュー・執筆:戸田のり実)
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