インタビューVol.4 「小さな天使たち」への”セレモニードレス(晴れ着)”。亡くなった赤ちゃんとママを救い続けるハンドメイド活動家(「Nagomi」村田美沙希さん)


2023.8.3

Vol.4
「Nagomi」
村田美沙希さんを聴かせて!

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(写真:村田さんが作成した肌着)

 この世に生まれて初めて着る、心のこもった特別なハンドメイドのお洋服。「Nagomi」の村田さんが作るベビー服は一見どこにでもある、こだわり派のベビードレスやお帽子だ。

しかし、写真ではなく実物を見てみると、明らかに普通の新生児服とは違うところがある。手のひらに収まってしまうサイズの肌着。人形に着せるのかと思うような大きさのベビードレス。とても小さなお帽子。村田さんが作るのは、流産・死産・未熟児で誕生した後で死亡などの赤ちゃんためのお洋服だ。

実は日本では約50人に一人が死産を経験し、流産を含めるとその人数は6人に一人と言われている。新たな命の誕生は「当たり前」ではない。「『グリーフケア』という言葉を知っていますか?」村田さんは自身の経験から、「小さな天使たち」の為のハンドメイド活動を行っている。

 

(写真:村田さんの作成したセレモニードレス)

 2019年4月6日、村田さんは39週0日でお腹にいた第二子の長男を死産した。村田さん自身も生死を彷徨い、意識が戻った時にはいつもあんなに激しくお腹を蹴っていた我が子はいなくなっていた。

自責の念や怒り、表現のしようがない感情から半年間引きこもったそうだ。家にいたら息子のことばかり考えてしまう。時間があらば村田さんと息子さんを襲った「常位胎盤早期剥離」のことを調べたり、本や論文を読んだ。

その中で「誕生死(赤ちゃんが生まれた直後や妊娠中に亡くなっても『確かにこの世に存在した』という想いを込めて言う言葉)」の本に出会った。その中の一冊に「看護師が小さく生まれ亡くなった赤ちゃんの服を作っている」という記述があった。村田さんの息子は3,500g以上の体重があったため通常の新生児服を着ることが出来たが、もっと小さい赤ちゃんたちには着る服がない。場合によっては「膿盆(のうぼん)」と呼ばれる汚れたガーゼなどを乗せるおぼんのようなものに入れられてしまうことすらある。

そのような現実を知り、村田さんは小学生以来の裁縫を始めた。1万円のミシンを購入して。

 

(写真:亡くなった赤ちゃんの棺も手作りで販売している。火葬までの日数が少ないため、必要なものはなるべくまとめて提供しているという)

 元々は大嫌いだった裁縫が、村田さんの救いになった。自分の為にも、お母さんたちの為にもなる。

今では村田さんの作る「小さな新生児服」は多くの悲しみを抱える母親達の元に届いている。「週数に応じて素材や寸法、バランスを変える必要があるんです。」

以前は助産師の知人を通して寄付活動を行っていた。しかし、そのやり方では当事者の生の声を聴くことが難しかったという。そして「グリーフケア(大切な人を失って深い悲しみを抱える人に寄り添うケア)」をもっと正しい形で推進したいという想いから、村田さんはNPO法人を立ち上げた。

「グリーフケア」には病院や地域での格差が大きく存在するのが現状だという。そして、企業にも正しい知識が浸透していないばかりに「死産の翌日から出社する女性社員」も多い。心身のケアがきちんと出来ていないために、結果的に退職を選ぶ人も後を絶たない。

 

(写真:村田さんのちいさな作品たち)

 

 「日本では、死んだことを語るのはタブーとされる風潮がある。けれども、私は当事者として語っていきたい。変えていきたい。」

悲しい出来事と、ハンドメイドとの出会いが彼女の人生の方向を変えた。

「ハンドメイド作家」という範疇で彼女を収めてしまうのは何か違う気がする。その為、私は彼女を「ハンドメイド活動家」と呼びたい。「ハンドメイド活動家」の彼女はこれから、多くの女性達を救っていくことだろう。そして、小さな赤ちゃんたちへの最初で最後の洋服は、その服自体の大きさ以上の意味を、感慨を多くの人の心に残すだろう。

「小さな天使たち」への特別な”セレモニードレス(晴れ着)”は今日も心を込めて、作られている。

 

(インタビュー・執筆:戸田のり実)

 

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